【訪問看護コラム】見えない褥瘡(床ずれ)の怖さ〜DTI疑いとは〜
「見た目は軽い」にご用心?
見えない褥瘡(床ずれ)のお話
〜ご利用者様を守るための専門的な視点〜
こんにちは。SUNAO訪問看護(つくばみらい店)ステーションの看護師です。
「ちょっと赤くなっているけれど、傷にはなっていないから大丈夫かな」
そう思って様子を見ているうちに、数日後に急に真っ黒いかさぶたになったり、深い傷になってしまったりすることがあります。
実はこれ、**「DTI(深部損傷褥瘡)疑い」**と呼ばれる状態かもしれません。
表面は軽そうに見えても、実は皮膚の奥深くで大きなダメージが起きている……そんな「氷山の一角」のような床ずれについて、今回は少し詳しくお話しさせていただきます。
1. 定義と概念の変遷
DESIGN-R®2020より、「深部損傷褥瘡(DTI)疑い」という項目が新たに追加された。これはNPUAPが提唱した概念を取り入れたものである。
従来の定義では、StageⅠは「圧迫しても消退しない発赤」とされていた。しかし、臨床現場では皮下組織より深部の損傷が疑われるものの、表面上は「圧迫で消退する発赤」や「びらん・水疱」を呈するケースが存在する。
これらを網羅的に捉えるため、DESIGN-R®2020ではStageⅠの所見に限定せず、以下の多様な肉眼的所見を含むものを「DTI疑い」と定義した。
- 発赤、紫斑
- 浮腫
- 水疱(血疱を含む)
- びらん、浅い潰瘍
※用語として「疑い」が付されているのは、初期段階では真の深達度が確定できないためである。
2. DESIGN-R®2020における評価基準の変更点
この改訂に伴い、重症度分類であるDESIGN-R®のスコアリングにも変更が加えられた。
- D(Depth:深さ):項目に「DTI(深部損傷褥瘡疑い)」が追加された。表記は「DDTI」または「DU」と表記する。
- G(Granulation:肉芽組織):DTI疑いの場合、深部は視認できないため、一律に「g0」(創が治癒した場合、創が浅い場合、DTI疑いの場合)として評価する。
3. アセスメントのポイント
急性期の皮下脂肪組織の変化は視診のみでは判断が困難であるため、複合的なアセスメントが必要となる。
- 視診:皮膚の変色(濃い赤、紫、栗色)や血疱の有無を確認する。
- 触診:硬結(硬さ)、熱感、疼痛の有無を確認する。サーモグラフィーによる皮膚温測定も補助的に有用である。
- 画像診断・検査:エコー(超音波)による皮下浮腫の観察や、血液検査(CPK:クレアチンホスホキナーゼ)による筋損傷の評価が有用な場合がある。
- 観血的処置:必要に応じ、医師によるデブリードマンを行い、創底を確認して深達度を判定する。
- 経時的観察:これが最も重要である。時間の経過とともに壊死組織が明らかになるため、毎日のフィジカルアセスメントが不可欠である。
大事なのは「見た目に惑わされないこと」です。
「DTI疑い」は、発見が早ければ早いほど、専門的な除圧(圧力を逃がすケア)を行うことで重症化を防げる可能性があります
